車椅子体験の意味と実践・展望
一般社団法人Smile Againは、障害の有無に関わらず、誰もが地域で安心して暮らせる社会の実現を目指し、子どもたちへの車椅子体験活動を9年間継続してきた。
日本社会では、車椅子は「特別な人のもの」として捉えられがちであり、日常生活の中で実際に触れる機会はほとんどない。そのため、街やサービスの多くが、無意識のうちに「歩ける人」を前提としてつくられているのが現状である。
この状況に対し、Smile Againは、子どもたちが実際に車椅子に乗り、段差や坂道、人との関わりを体験する学びの場を提供してきた。体験を通じて、子どもたちは「不便さ」だけでなく、「どうすれば一緒に楽しめるか」「どう声をかければよいか」を自然に考えるようになる。
活動を続ける中で、子どもたちの変化は、家庭や地域にも波及していった。車椅子利用者を見かけた際に自然に声をかけるようになったり、学校や店舗での配慮を大人に伝えたりする姿が見られるようになった。車椅子体験は、単なる疑似体験ではなく、街の空気を少しずつやさしく変えていく実践となっている。
本活動の背景には、代表自身の実体験がある。代表は30年前に突然車椅子生活となり、当時1歳・4歳・7歳の子どもを育てるシングルマザーとして、重度訪問介護や地域の支えを受けながら生活してきた。ケアに支えられて子育てをしてきた当事者であり、三人の子どもの母親として、「次の世代にどのような社会を残すか」を考え続けてきた。
現在、Smile Againは、車椅子体験を通じて子どもたちに「支える・支えられる」という関係を固定化せず、誰もが立場を入れ替えながら生きる社会の在り方を伝えている。高齢化が進む日本社会において、車椅子は特別な存在ではなく、誰にとっても身近な選択肢となり得る。
Smile Againのアクションは、制度を変える前に、人の意識と行動をひらくことを重視している。子どもたちの経験が未来の社会を形づくるという視点から、地域に根ざしたケアの文化を育て続けている。